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「鑑定士と顔のない依頼人」を考察!ハッピーエンド?バッドエンド?

2013年に公開されたイタリア映画、鑑定士と顔のない依頼人。

恋を知らぬ老人のラブストーリーであり、ミステリー色も強い本作は、一見するととてもハッピーエンドとは言えないラストが待っています。

しかし監督はハッピーエンドだとしており、その違いはどこからくるのでしょうか。

本記事では、鑑定士と顔のない依頼人はハッピーエンドなのかについて、考察します。

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鑑定士と顔のない依頼人の違和感を覚えるシーンを考察

すべてを知った上で見直すと、最初に見たときに「ん?」と思った場面がどういうことだったのかが見えてきます。ここからは、伏線とも言うべきそれらを確認してみます。

 

①ヴィラの姿

使用人のフレッドの話によれば、クレアの両親が亡くなったのは一年ほど前ということでしたが、ヴィラの中は埃まみれで、使用人がいてクレアが住んでいるにもかかわらず、手入れは行き届いていません。さらには、10年以上使用人をしているはずのフレッドが、隠し部屋のことはともかく、部屋数を把握しきれていないというのも、冷静に考えれば妙な話です。

 

そして、美術品やアンティークの家具がある中で、後から誰かが置いたような場違いの歯車。

これはヴァージルに、ヴィラに通う理由を与えるものだったと考えることができます。

 

②二度目の覗き見

一度、帰るフリをしてクレアの姿を見たヴァージルは、もう一度彼女の姿を見たいと、次にヴィラを訪れたときも同じやり方でクレアを覗き見ます。

 

このときクレアは、ガウン一枚で下には何も着ていないという姿で現れ、電話の相手に対して、彼(ヴァージル)は信用できると言い、キッチンで食器を割って足を怪我したフリをして、ガウンの前を開けたまま、ヴァージルが覗き見している方向に向かって座り、足を上げて傷を確認します。

これらはすべて、ヴァージルを自分に夢中にさせるための仕込みだったと見ることができます。

 

③クレア失踪の理由

広場恐怖症で外に出られないはずのクレアが突然失踪し、ヴァージルはパニックに陥りますが、これはクレア、というよりは、ヴァージルを騙していた一味全員にとって困った状況から生じたことと考えられます。

 

ヴァージルはヴィラに行くとき、事前にアポを入れていたのに、このときはアポ無しで訪れました。鍵を持っているから中に入ることもできます。

 

しかし、このときクレアはヴィラにいなかったと思われ、それを誤魔化すために失踪という形にして、ロバートとフレッドも捜索に強力、一度ヴァージルを外に出して時間を作り、クレアがヴィラの屋根裏の隠し部屋に入ってから、ロバートがさも今気づいたように、他にも隠し部屋があるのでないかと連絡、フレッドは何も知らないフリをして、可能性があるのは屋根裏だけと言って案内し、見事にクレアのとの再会を演出します。

 

クレアが本当に、ヴァージルが信じているクレア(広場恐怖症で他人が怖い)なら、いつ訪問してもヴィラにいるはずです。しかし最後まで観れば分かるように、クレアもまた、ヴァージルを騙していたうちの一人であり、常にヴィラにいるわけではなかったため、不在にしているときにヴァージルが訪ねてきてしまい、予定外のトラブルを失踪という形で乗り切り、二人の絆を深めることに利用した、ということができると思います。

 

④暴漢に襲われるヴァージル

雨の日の夜、ヴィラを訪れたヴァージルを突然襲った暴漢ですが、これは二つのことを示唆しています。

 

一つは最後に判明することですが、ロバートが、恋人のサラの叔母が「また」いなくなってしまったことに対して、GPSのような追跡装置を渡すシーンがあり、その追跡装置と同じ形のものが、ヴァージルの車のトランクから見つかります。つまり、ロバートたちはヴァージルの動きを監視しており、あの夜彼がヴィラに向かったことを知っていたと考えることができます。

 

もう一つは、クレアが外に出るキッカケを作ることです。

ヴァージルが自宅のどこかに隠している肖像画の場所を突き止めるには、彼の懐に深く入り込む必要があります。それが可能なのは、人間を猿並みの知性にする恋の力でヴァージルを魅了して止まないクレアを置いて他にいません。しかし、彼女が外に出られない限り、関係を深めるのは難しく、そのためにキッカケが必要です。

 

そこでロバートたちは、クレアが確認できる位置でヴァージルを暴漢に襲わせ、愛する人を助けるためにトラウマを乗り越えて外に出るという、普通に考えれば感動的なシーンを演出したと考えられます。

 

そこまで必死なら、広場恐怖症を乗り越えて外に出てきても違和感は少なくて済みます。実際ヴァージルは、命の危険を感じることに遭遇したにも関わらず、病院に付き添ってくれるクレアの姿を見て、笑顔を見せています。

 

この演出は成功し、クレアは限定的であるものの、外に出ることができるようになったという自然な状態を作り出し、ヴァージルの自宅を訪れ、シークレットルームの場所と入り方を確認することに成功します。

 

⑤ビリーのセリフ

ヴァージル最後の仕事となったロンドンでの競売の後、ビリーはヴァージルに「会えなくなると寂しいよ」と口にしています。確かに一緒に仕事をすることはなくなりますが、会えないわけではないはずです。

 

しかし、肖像画を奪って姿を消すという意味では、二度と会うことはないという意味になり、ビリーのうっかりだったのか勝利宣言か、いずれにしても、この後の結末を示唆するさりげないセリフになっています。

 

⑥残されたサインと残されなかったサイン

「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」

 

これは、ヴァージルがクレアに語ったことです。そしてそのあとに、作者はサインを残したくなるのだとも話しています。

その言葉通り、ビリーは自身の作品である踊り子の絵の裏にサインを残し、ロバートはオートマタに自分が作ったものだと分かること……オートマタが発する言葉とレコーダー……を残しました。

 

これは、クレアの電話から始まった一連のストーリーはすべて偽りだったこと、その偽りの中に作者が残したサインということを意味していると考えられます。

しかしそれであれば、一連の詐欺の中心人物の一人であるクレアもまた、何かしらサインを残していてもいいはずですが、彼女はそれと分かるものを残していません。

 

つまり、クレアも偽りを演じていたことは間違いないですが、彼女の最後の言葉、

 

「どんなことが起こっても、あなたを愛してるわ」

 

という想いだけは、"本物"だったということが考えられます。

詐欺という贋作の中に一つだけ秘められた本物のストーリー、それが、クレアのヴァージルに対する愛だったということです。

 

そう考える理由の一つとして、彼女が初めて自分の部屋にヴァージルを招き入れた際やり取りがあります。

 

あのときの目的は、オートマタの残りの部品を見せて、詐欺成功の障害となるロバートとヴァージルの決別を修復することだったと思いますが、クレアが電話で話す中で、「最終章は変更したい、ハッピーエンドにしたい」と言ったのは、この詐欺行為の最後を変更したい、という意味だったのではないか、ということです。

 

おそらくは、電話の向こうの相手はロバートかビリーで、それはダメだと言われたと思われますが、偽りの関係を続けていたクレアは、いつの間にかヴァージルの想いに心を動かされ、別の結末にしたいと考えていたのかもしれません。

 

しかしそれは叶わず、自分の想いに偽りはないという意味で、「どんなことがあってもあなたを愛してる」という言葉を伝え、それが本物であることを証明するために、サインを残さなかったと考えられます。

 

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ハッピーエンドか、バッドエンドか考察

ここで、この物語がハッピーエンドかバッドエンドかについて考えてみます。

 

物語の主要人物で、ヴァージルを除く全員……クレア、ビリー、ロバート、サラ、フレッドの五人は、ヴァージルを騙して彼のコレクションを盗み出すための詐欺グループの一味だったと考えられます。おそらくはビリーが首謀者で、クレアやロバートは、元々そういう世界の人間なのか、金で雇われたのか不明ですが、コレクション強奪のキャストとして雇われたと考えて間違いないと思います。

 

二年もの間ヴィラを借りていたり、クレアが一年半の間にヴィラを出入りしていたのは、ロバートがヴァージルの信頼を勝ち取る期間が必要だったこと……ヴィラで見つけた歯車を迷わずに彼に見せに来るように……一年ほど前に両親が亡くなって天涯孤独になったというクレアが、ヴィラの主であるという事実を作り上げる期間が必要だったことが考えられます。つまりは、準備期間が必要だったということです。

 

大規模な計画を立てたことで不足の事態にも対応でき、よく見れば不自然なことも、ヴァージルの恋は盲目も手伝って詐欺は成功、ヴァージルは生涯をかけて集めた大切なコレクションと愛する人という、最大級の喪失を二つ同時に味わうことになり、愛を知って、愛する人に尽くそうとする老人に対して、あまりにも酷いバッドエンド以外の何者でもないと思うのが自然だと思います。

 

しかし別の見方をすると、もしこの事件がなかったら、ヴァージルは死ぬまで愛を知らぬまま、コレクションに囲まれて人生の終わりを迎え、そのときになって、理解できないという理由で女性との関係をもたなかったことを後悔して死んでいったかもしれないとも考えられます。

 

すべてが演出だったとしても、自分のすべてを投げ売ってでも守りたいと思う存在に出会い、結ばれ、彼女もまた、同じ思いをもってくれたと感じることができたのは、長期的に見れば幸せなことかもしれません。

 

チャップリン風に言うなら、

 

「クローズアップで見ればバッドエンド、ロングショットで見ればハッピーエンド」

 

ということができると思います。

 

おそらく、クレアがヴァージルの前に再び現れることはないと思いますが、もしかしたら、作られたエピソードであったはずのナイト&デイの件は、クレアが実際に体験したことで、だからこそ店は実在しており、ヴィラの隠し部屋でそうしていたように、遠くからヴァージルのことを見ているのかもしれない、決して声をかけることはなく、想いを秘めたまま……そんなふうに想像することもできます。

 

どう見るかは、映画を観た一人ひとりの想像によりますが、バッドエンド一択ということはないのかもしれません。

 

鑑定士と顔のない依頼人はどんなストーリー?

鑑定士と顔のない依頼人は、一度観てからもう一度観ると、最初に観たときに感じる違和感の正体(伏線)に気づきます。そんな伏線について話す前に、あらすじを見ていきます。

 

①一本の電話

主人公はヴァージル・オールドマンで、職業は鑑定士、オークションでも見事な手腕を発揮し、世界的にも知られている凄腕です。非常に潔癖で、レストランには彼専用の食器やグラスがケースに入れられており、常に手袋をしています。

 

地位も名誉の金もすべて持っていますが、三つの強い影もあります。

一つは、友人のビリーと協力して、自分が取り仕切るオークションで高価な作品を安く落札させて手に入れること。一つは、そうやって手に入れた作品のうち、美女の絵画は自宅のシークレットルームに飾り、時折ワインを飲みながら絵画を鑑賞すること。最後の一つは、本人曰く「女性は理解できない」ために、恋をしたことがなく、生身の女性が苦手であることです。

 

そんな変わり者のヴァージルのもとに、一本の電話がかかってきます。誕生日の最初の電話ということで、普段は助手に出させる電話を自分で取ると、女性の声で、両親が残した家具を鑑定してほしいという内容でした。

依頼人はクレア・イベットソンといい、最初は鑑定を断るものの、結局は家に行くことにします。

 

約束の日、家を訪れたヴァージルでしたが、クレアは現れず、雨の中を40分待たされて激怒しますが、事故に遭ったという連絡が入り、怒りは同情に変わって、再度訪問の約束をします。

 

しかし、二度目の約束の日もクレアは現れず、腹を立てて帰ろうとしますが、長年クレアの両親の使用人だったというフレッドが現れて諭され、家(ヴィラ)の中を案内されます。

 

ヴィラには数えきれないほどの部屋があり、たくさんの家具や絵画が並んでいます。そんな中でヴァージルの興味を引いたのは、地下を歩いているときに見つけた歯車でした。

他の美術品や家具と違い、サビの状態から考えると、ヴァラに置かれていたものではないと推測され、それが何か知りたくなったヴァージルは、こっそりポケットに入れて持ち帰ります。

 

ヴィラを後にしたヴァージルは、一流の機械職人であるロバートの店を訪れ、歯車を見せると、とても精巧に作られたものだと分かり、もっと部品があれば全体像がわかるかもしれないというロバートの言葉に、ヴァージルはまたヴィラに訪れたときに探してみることを決めます。

 

②顔の見えないクレア

ヴィラの品物を鑑定する作業に入るヴァージルでしたが、クレアは一向に姿を現しません。契約書にサインをしてもらわない限り、鑑定の作業を進めることはできない上、最初に来たときにはなかった物が置かれていたりと、気になることはあるものの、仕事は仕事、例の歯車のことも気になっていたヴァージルは作業を進めます。

 

そのうち、フレッドの携帯が鳴り、通話の状況から、クレアがヴィラの中にいることに気づいたヴァージルは、顔を見せなければ取引は進められないと声を荒らげますが、クレアは夜の9時に電話すると言って一方的に通話を終えます。

 

フレッドに聞いたところでは、クレアは年齢27歳ぐらい、10年以上使用人をしているが、会ったことがない、広場恐怖症という病気を患っていると聞かされ、眉をひそめますが、次の歯車を発見したことで感情は別の方向に動き、ロバートの店を訪ねて見せると、18世紀に作られた何かであることが判明、二人は興奮します。

 

夜9時になり、クレアから電話が入りますが、内容は、取引を中止してほしいというもので、ヴァージルは興味深い歯車を手に入れる機会を失ってしまいます。

それでも、歯車と謎多きクレアのことが気になったヴァージルは、ヴィラの向かいにあるバーを訪れ、名残惜しそうにヴィラを眺めるも、中に入ることはできません。

 

失意のうちにロバートの店を訪れたところ、ロバートは、例の歯車が18世紀のオートマタ(機械人形)の制作者の名前が刻まれていることを教えてくれます。さらに、部品が揃ったら、オートマタを再現してみせるとも。

 

翌日、再びクレアから連絡が入り、自分の態度は問題だった、もう一度会いたいと言われ、ヴィラに向かったヴァージルに、クレアは再び鑑定を依頼します。何度も振り回されているとはいえ、オートマタを完成させたいヴァージルは依頼を引き受けます。

 

③少しずつ通じ合っていく二人

何度もヴィラに通ううちに、壁越しではあるものの、クレアと会話するようになったヴァージルは、オートマタの部品を見つけてはロバートのところに持っていき、少しずつ完成形が見えてきます。

 

やがてクレアからの信用を得たヴァージルは、必ず音を立てて入ること、そうしないとクレアがパニックになるという忠告とともにフレッドからヴィラの鍵を受け取り、直接連絡が取れるようにと、それまで頑なに持つことを拒否していたスマホを手に入れて、ロバートに使い方を教えてもらうほど、クレアのことが気になっていきます。

 

鑑定品のカタログ作成のこともあり、ヴィラに頻繁に通うヴァージルは、海外出張の仕事をよく分からない理由で断るなど、クレア優先の生活に変わっていきます。

思いはどんどん強くなっていき、ついにヴァージルは、クレアの姿を一目見ようと、ドアを開けて帰ったフリをして部屋に留まり、隠し部屋から出てきたクレアの姿を目撃します。

 

クレアは会話から想像したように繊細で、儚い美しさをもつ女性でした。

すっかり魅了されたヴァージルは、もう一度彼女の姿を見たいと、二度目の覗き見をしますが、スマホを落としてしまったことで物音が響き、クレアはパニックに陥って隠し部屋にこもってしまいます。

 

助けを求めて電話してきたクレアに、ヴィラの中に戻ったヴァージルは、物音の正体は自分で、クレアの姿を見たかったと正直に打ち明けます。最初は拒絶したクレアも、ヴァージルの正直さに怒りを収めていき、恐る恐る部屋を出てヴァージルと対面、二人は和解します。

 

対面を果たせたことで、ヴァージルはクレアに恋をしていることを自覚し、尽くすようになっていきます。想いは強くなっていき、クレアと一緒に生きていくことを考えるようになったヴァージルは、彼女のために指輪を購入し、ヴィラに向かいますが、どこを探してもクレアは見つかりません。

 

パニックになってフレッドやロバートに連絡、捜索するも見つからず、動揺が過ぎて競売の仕事のことをすっかり忘れており、助手に言われてオークション会場に向かうも、まったく集中できずに、普段ならありえないミスを犯し、強いショックを受けます。

 

友人のビリーにも状況を説明、誘拐されたのではないかと考えますが、そのときロバートから連絡が入ります。彼は、ヴィラには他にも隠し部屋あるのではないかと言い、ヴァージルはフレッドを連れてヴィラを訪れ、天井裏の隠し部屋の中にいたクレアを見つけます。

 

彼女は、昔付き合っていた人と行った、ナイト&デイというレストランでの出来事を話します。レストランに行って、繁華街を歩いていたとき、車が飛び込んできて、意識が戻ったときには彼はいなかった、その日を境に、ヴィラから出なくなったと涙を流すクレアを、ヴァージルはそっと抱きしめ、二人はさらに親密になります。

 

④贋作の中にも本物が潜む

ヴィラで集めた部品によって、オートマタはほぼ完成していました。しかし、クレアが最優先になっていたヴァージルは、彼女に会うために大雨の中ヴィラを訪れます。ところが、車を降りてヴィラに向かう途中、暴漢に襲われ、倒れて動けなくなります。

 

朦朧とする意識の中で、クレアに連絡するヴァージル。電話越しに何も話さないヴァージルを不審に思ったクレアが、窓から外を除くと、そこには倒れているヴァージルの姿があり、クレアは一瞬躊躇ったものの、ヴィラの外に飛び出し、車を止めて助けを求め、ヴァージルの病院まで付き添います。

 

思わぬことで外に出られるようになったクレアは、ヴァージルの屋敷を訪れ、肖像画のシークレットルームを案内され、この家で一緒に住もうという提案を受け入れます。

 

「たとえ何が起きようと、あなたを愛してるわ」

 

そう言ってヴァージルを抱きしめ、ヴァージルもまた、愛してると言ってクレアを抱きしめます。

 

やがて、ヴィラの品物のカタログが完成しますが、クレアは、あなたと暮らし始めて、売るのをやめようと考えるようになった、元の姿に留めておきたいと言い、ヴァージルもそれを受け入れ、カタログを破り捨てます。

ロバートと、恋人のサラも、二人のことを祝福し、ヴァージルは、次のロンドンの競売を最後に、鑑定士としての仕事を引退することを宣言します。

 

最後の競売とあって、知り合いも多く駆けつけ、有終の美を飾ることができたヴァージルをたくさんの拍手が祝福し、友人のビリーも駆けつけ、自分の絵を送ったと伝えてきます。

 

仕事を終え、愛しい人が待つ自宅へ帰るヴァージルでしたが、そこにクレアの姿はありません。メイドに聞いても分からず、昨日の夜もロバートたちと出かけていたと聞かされます。

 

家の中を歩き回り、ヴィラにあった踊り子の絵、クレアの母親だという絵を見つけたヴァージルは、それをシークレットルームに置くために部屋を開けると、肖像画のコレクションは一枚残らず消えており、部屋の奥にはオートマタが置かれていました。

 

オートマタは、

 

「いかなる贋作にも必ず本物が潜む、そのとおりだ、会えなくて寂しいよ」

 

その言葉を繰り返すのでした。

 

いかなる贋作にも……という言葉は、ヴィラでクレアと食事したときにヴァージルが言った言葉で、二人の他には、クレアという女性を見てほしいというヴァージルの要望に応えて、隠れて二人の姿を見ていたロバートしか知らないものであり、会えなくて寂しいよという言葉は、有終の美を祝福に来たビリーが、最後に伝えた言葉でした。

そして、踊り子の肖像画の裏には、

 

「ヴァージルへ 親愛と感謝を込めて ビリー」

 

というサインが残されており、ヴァージルは打ちし枯れます。

 

クレアを求めてヴィラを訪れるも、入り口は鎖で施錠され、ヴァージルは向かいのバーを訪ねて、ヴィラにあったものはどうなったのか尋ねます。

すると、店の端に座っているクレアという小さな女性が、ヴィラは空き家で、持ち主は自分、使いたい人に貸し出す、ここ二年ほどは、技術者の青年に貸していたと言います。

さらには、クレアが一年半の間に237回も外へ出ていたことも聞かされます。

 

ロバートの店を訪ねるも、もぬけの殻で、ショックからヴァージルは一気に老け込み、車椅子生活になってしまいます。しかしその後、全てが嘘だったのかを確かめるために、リハビリに励み、クレアが話していたナイト&デイという店を探すために旅立ちます。

 

街中を歩き回り、ついにナイト&デイを見つけ、店に入ったヴァージルは、店の入口がよく見える席に、入り口側が正面になる席に座り、店員には「連れを待っている」と伝え、入り口のほうを気にしながら、一人メニューを見るというシーンで、物語は幕を閉じます。

 

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見方によってはハッピーエンド

鑑定士と顔のない依頼人は、考察すればするほど、いろいろな想像が膨らみます。

冷静に見ていけば、大どんでん返しというほどのものではないかもしれませんが、ただ結末が予想できることではなく、ヴァージルとクレアの関係の実際のところはどうなのか、という部分が、伏線云々以上に興味深いところだと思います。

ぜひ、何度も見て、自分だけの考察を見つけてみてください。

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