PR 映画・ドラマ

真実の行方は実話なのか!?モデルとなった事件はある?

1996年に公開された、リチャード・ギア主演の真実の行方。

1993年に発表された同名の小説をもとにした映画で、賛否両論あるものの、映画としては成功したと言えます。

 

ミステリーには、モデルになった事件があることも珍しくないですが、真実の行方にもモデルとなった事件があるのでしょうか? もしあるとしたら、それはどんな事件なのでしょうか?

 

本記事では、真実の行方は実話なのかについて、お話します。

 

スポンサードリンク

実話?真実の行方のモデルとなる話はあるのか

多重人格(解離性同一性障害)による殺人事件と思わせておいて、実は物語の中でほんの数分しか顔を出さないロイが、別の人格を演じていたという衝撃のラストで幕を閉じる「真実の行方」は、後味の悪さとともに、面白い映画、人に話したくなる映画という印象が残ります。

 

この映画に、もしモデルとなった事件があるなら、それはどういうものなのか知りたくなりますが、残念ながら「真実の行方」はフィクションであり、モデルとなった事件は存在しません。

 

しかし、多重人格者が起こした事件として、有名なものが一つあります。

それが、ビリー・ミリガン事件です。

 

スポンサードリンク

24の人格をもつ男、ビリー・ミリガン

1977年、オハイオ州立大学キャンパス内での3人の女性に対する連続強姦と強盗の容疑で、一人の男が逮捕されました。男の名はビリー・ミリガンといい、裁判の準備を進める中で、担当弁護士は奇妙なことに気づきます。

ビリーは話す度に別人のようになり、ビリーは今眠っているなど、不可解なことを口にするため、調べてみると、彼の中にはビリーの他に23もの人格があることが判明します。

 

ビリーは小さい頃に実の父親が自殺し、養父から身体的、性的虐待を受け、それが原因で複数の人格が生まれたと考えられ、度々「時間が失われる」感覚を持つようになります。人格が入れ替わっている間、ビリー自身は眠っているのか、記憶がない状態で、徐々に増えていく「失われる時間」に耐えきれなくなり、17歳のときに飛び降り自殺を図ります。

 

しかし、別の人格が出てきて失敗、彼の伺い知らぬところで、犯罪に躊躇いがないケヴィンという人格が強盗事件を起こしたり、服役したりと、本来の人格が眠っている間に、一つの体で複数の人間の人生を送るような状態になっていました。

 

人格の統合

前述の事件で逮捕されてから一年後の1978年3月、病院でビリーの治療が開始されます。

約一年かけて人格を安定させることができるようになったビリーは、1978年12月に法廷で証言し、無罪となります。その後は、精神衛生センターでさらに本格的な治療が行われ、「Teacher」という最も安定した人格が生まれ、その後いくつかの困難、さらには再度の逮捕がありながらも、人格は安定し、1991年8月に釈放されました。

 

真実の行方の悪役、ロイとの共通点

「真実の行方」が、ビリー・ミリガンの事件をモデルにしたという事実はありませんが、身体的、性的虐待を受けていたこと、記憶が飛ぶ=時間が失われるなど、参考にしたかもしれない共通点はあります。

しかし、ロイは多重人格を演じていただけなのに対し、ビリーは24の人格が事実として認識されており、本質は大きく異なります。

 

もう一つの共通点として、二人とも罪を犯したにも関わらず、無罪になったことが上げられます。

 

ロイを外に出したら危険なのは言うまでもないですが、ビリーのほうは気の毒な部分もあるものの、やはりいつ犯罪に躊躇いがない人格が出てくるか分からない人間を、多重人格や心神喪失を理由に無罪にされるのは、被害者や普通に生活する人々にとっては、不安と恐怖以外の何者でもありませんし、凶悪犯罪を起こした事実が許される理由にはなりません。

 

フィクションである「真実の行方」も、実際に起こった事件である「ビリー・ミリガン」事件も、精神的な問題を理由に無罪にすることに対して、考えさせられる内容とも言えます。

 

真実の行方はどんなストーリー?

まずは、真実の行方のあらすじを見ていきます。

 

①大司教惨殺事件

相手がどんな人物であっても弁護を引き受ける弁護士、マーティン・ベイルは、たとえ依頼人がギャングであろうと依頼を引き受けて無罪に導きます。メディアを通して見えてくる彼は、目立ちたがり屋で金のためならなんでもする弁護士という印象です。

 

そんなマーティンがあるパーティに出席した翌日、ラシュマン大司教が惨殺されたという事件が起こります。遺体は78箇所の刺し傷と、「B32.156」という、謎の文字が残されていました。

 

捜査は難航するかに思われましたが、事件後すぐに、返り血を浴びて逃げるアーロン・スタンプラーという青年が容疑者として逮捕されたというニュースが入り、マーティンは無料弁護という形でアーロンの弁護を引き受けます。

 

アーロンは、現場いた第三者がラシュマンを殺害したのを見たが、その後に記憶が飛んでしまい、気づいたら血まみれだった、犯人の顔や特徴は分からないという、なんとも頼りない証言で、証拠はアーロンが犯人であることを示していました。

 

しかしマーティンは、どんな人間でも、罪が確定するまでは無実なのだという信念のもと、アーロンが犯人ではないことを証明するために動きます。

 

②アーロンの無実を信じるマーティン

マーティンは、人間は本来善人であり、罪を犯したから悪人というわけではなく、善人であっても状況次第で罪を犯してしまうことがあるから、救いの手が必要なのだという考えをもっており、売名のために弁護を引き受けたと言われても気にせずに裁判を戦います。

 

検察側は、マーティンのかつての恋人であるジャネット・ヴェナブルで、彼女は元カレ相手でも容赦なく、アーロンに死刑を求刑、証拠も揃っているため、状況はマーティンたちに不利になっていきます。

 

なんとか無罪を勝ち取るために、マーティンはアーロンに寄り添い、戦う材料を探しますが、アーロンは、17歳のときに一人でシカゴに来て、路頭に迷っているところをラシュマンに拾われた、アレックスという友人がいて、リンダという恋人がいるということぐらいしか話しません。

 

他にも何かを隠しているように見えるアーロンですが、無理やり話を聞き出すわけにもいかず、心神喪失を使って精神鑑定に持ち込もうとするマーティンの作戦は難航します。

 

メディアも、何度もアーロンが逮捕されるシーンを流し、世論もアーロンが犯人であることを疑っていません。大司教殺害のしっかりとした証拠があり、容疑者がいて、世論も死刑を望んでいる、という筋書きで死刑を求刑という、付け入る隙がない状況を、検察は作り上げていきます。

 

③土地開発、そして新たなる事実

しかしその後の調べで、ジャネットの上司でもあるジョン・ショーネシー検事や町の有力者たちが、土地開発を巡ってラシュマンと対立、ラシュマンは教会の土地で開発はしないと決定したため、ジョンたちは数百万ドルの損失を出していた事が分かります。さらには、おそらくはその件で、ラシュマンは多数の殺害予告を受けていたことが判明し、状況が変わってきます。

 

さらなる証拠を探す中で、マーティンはラシュマンのアパートを調べ、そこでとあるビデオテープを発見します。中身は、アーロンやリンダや他の少年が性行為をしている様子を撮影したものであり、法廷で陪審員に見せれば死刑を免れる可能性があるものの、同時にアーロンにはラシュマンを殺害する動機があると示してしまうことにもなるため、マーティンは悩みます。

 

④変貌を”見せる”

ビデオのことを黙っていたアーロンを責めるマーティンの前で、アーロンは突然「ロイ」という人格に変わり、自分が大司教を殺害したと自白、マーティンのことも脅しますが、再びアーロンに戻ります。そしてアーロンは、自分の人格が入れ替わったことを覚えていませんでした。

 

アーロンが最初に証言した、「記憶が飛んだ」瞬間を見たマーティンは、神経心理学者のモリーに相談します。モリーは、アーロンが典型的な多重人格者(現在は解離性同一性障害と呼ばれる)であり、原因は父親とラシュマンによる長年の身体的、性的な虐待によるものだと話します。

 

マーティンは、答弁を変更せずにその事実を利用するために奔走し、ロイを証言台に立たせて、ラシュマンによる性的虐待について質問します。このときは静かに質問に答えていたアーロンでしたが、反対尋問でジャネットが激しく責め立てると、突然「ロイ」が顔を出し、ジャネットに向かって「近づいてきたら首をへし折る」と脅し、取り押さえられ、拘置所に連れて行かれます。

 

しかし、人格が入れ替わる瞬間を見せた効果は絶大で、判事は被告人を心神喪失で無罪、身柄は精神病院に委ねるという決定を下します。

 

あらゆる証拠がアーロンを犯人だと示しており、陪審員や世論の支持も得ていたはずの裁判が無効となったことに加えて、大司教ラシュマンの犯罪を公にしてしまったことで、ジャネットは職を失うことになります。

 

④勝ち取った無罪、しかし……

無罪を勝ち取ったマーティンは、独房にいるアーロンを訪ね、裁判は中止になったこと、病院に収容されてもすぐに出てこられることを伝え、二人は勝利を喜びます。

アーロンは裁判中の出来事を覚えていないと言いますが、勝利したのだから問題ないということで、その場を去ろうとするマーティンに、アーロンは衝撃の一言を放ちます。

 

「彼女の首が無事であることを祈っていると伝えてくれ」

 

ジャネットへの詫びの言葉でした。

しかし、その言葉を法廷で口にしたのは「ロイ」であり、アーロンの記憶にはないはず……

再びアーロンと対峙するマーティンに、アーロンは、ラシュマンもリンダも自分が殺したと得意げに話します。

 

「ロイはいなかったのか……?」

 

マーティンの質問に、アーロンは、

 

「アーロンがいなかったんだよ」

 

と悪意に満ちた不気味な笑みを浮かべます。

 

それは、多重人格などというものは最初からなく、ロイがアーロンという気弱な青年を演じていたことを示していました。ロイはずっとロイであり、マーティンの前ではアーロンという役を演じ続けて、多重人格の証明のためだけに一瞬本来の自分を出した……マーティンは、まんまと無罪獲得に利用されたのです。

 

茫然自失となったマーティンは、普段なら正面から出る裁判所を、メディアを避けるように裏口から出て、物語は幕を下ろします。

 

スポンサードリンク

実話ではないが、現実の問題でもある

ラスト5分でゾクっとさせる法廷ミステリーの傑作「真実の行方」は、実話ではありませんでした。

しかし日本でも、精神的問題を理由に無罪を主張するケースは珍しくなく、6人を殺害しながらも心神耗弱を理由に無期懲役となった異常なケースもあります。

無実を勝ち取り、自由を得たロイが別人のように生きるとは思えず、映画とはいえゾッとする結末の本作を見ながら、現実の事件について考えてみるのもいいかもしれません。

-映画・ドラマ