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エスターは実話!?実際にあった恐ろしい事件の真相とは

自身の障害となるものを、手段を選ばず狡猾に排除する姿と、少女という見た目とのギャップ、そして終盤に明かされる衝撃の事実によって、ホラー好きの間では評価の高い映画、エスター。

 

2009年に公開され、2023年には前日談となる「エスター ファーストキル」が公開された本作は、実話だという噂があります。事実は小説より奇なり……? 本記事では「エスターは実話なのか?」その真相について解説します。

 

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エスターは実話!?リアル・エスター、ナタリア事件の真相

目的を達成するためなら殺人も躊躇わず、何人殺害しても罪悪感を覚えることがないエスターは、一般に想像されるサイコパスそのものです(実際にはサイコパスだから殺人をするわけではありません)。

 

心の底では、親や子供に示す愛情ではなく、男女の愛を渇望しており、病気によってそれが果たされないことからの凶行と見ることもできますが、その行動が異常であることは否定できない事実です。

 

こんな恐ろしい事件が実話だとしたら……と考えると背筋が寒くなりますが、その真相を見ていきます。

 

①本当にあった! リアル・エスターことナタリア事件

事の起こりは、エスター公開後の一年後、2010年のことです。

つまり、結論から先に言ってしまうと、エスターという映画が実話を基に作られたわけではなく、エスターと酷似した事件が映画公開の一年後に始まった、ということになります。

 

2010年、アメリカのインディアナ州に住マイケル・バーネットとクリスティーン・バーネット夫婦は、フロリダの養子縁組機関を通じて、ウクライナ出身で8歳の少女、ナタリアを養子にしました。すでに三人の子供がいる中で、さらに一人を引き取って育てるというのは容易ではないはずですが、心優しいバーネット夫婦は、ナタリアを孤独から救い出そうとしたのかもしれません。

 

しかし、引き取った翌日から、おかしなことが見えてきます。

ウクライナ出身であるにも関わらず、ウクライナ語を扱えず(ウクライナの母国語は、ロシア語と同じキリル文字を使用するウクライナ語で、人口の約80%が使用、一部ではロシア語が使われています)、代わりに英語は流暢であること、趣味趣向、思考や言動も大人びていて、ませているという言葉では足りないほどで、陰毛があり、月経もありました。

 

②病院で検査した結果……

これらのことに疑問をもったバーネット夫婦が、病院で医学的な検査を実施したところ、ナタリアの年齢は少なくとも14歳以上であることが判明し、二人はショックを受けます。

 

この時点で、もっと警戒してもよかったかもしれませんが、心優しいバーネット夫婦は、14歳であっても子供には変わりない、年齢が違っていたのは気になるけど、違和感の正体は分かったし、これからも一緒に、家族で仲良く暮らそうと決めます。

 

しかし、ナタリアはそう思いませんでした。

映画において、シスター・アビゲイルの証言でケイトがエスターに不信感をもったときと同じように、真実が明るみに出ることを恐れたナタリアは、本性を現し始めます。

 

③脅し、暴言、暴力、殺人未遂の数々

病院での検査後、大人しく過ごしていれば、もしかしたら正体が発覚することはなかった、あるいは発覚がもっと遅くなっていた可能性もあります。しかしナタリアは、不安と恐怖に囚われ、それらを怒りとして表出させ、バーネット家の人たちに危害を加え始めます。

 

子どもたちを脅す、バスルームの壁に血文字で「殺す」と書く、マイケルに「あんたを殺す」と言い放ち、寝ているときにベッドの足元に立つ、クリスティーンのコーヒーに漂白剤を入れる、電気の柵に押しつけるといった凶行をするようになり、身の危険を感じたバーネット夫婦は、ナタリアを離れて暮らすことを決めます。

 

しかし、ナタリアは法的には8歳の子供であるため、もしナタリアと離れて暮らし始めてしまうと、扶養義務の放棄となり、逮捕されることになります。

 

そこでバーネット夫婦は、少なくとも14歳以上という検査結果と、ナタリアの行動から、彼女は成人女性ではないかと推測し、それを証明するために行動を開始します。すると二年後、複数の医療機関の検査によって、衝撃の事実が発覚します。

 

④ナタリアの実年齢は……

複数の医療機関の検査によって発覚したナタリアの実年齢は、なんと23歳(2012年当時)。バーネット夫婦が考えたとおり、本当に成人女性だったのです。

 

ナタリアは、脊椎骨端異形成症(せいついこつたんいけいせいしょう)という、骨格の形成異常を引き起こす病気が原因で、身長が約91cmでした。そのため、外見からは大人には見えなかったのです。

 

この結果を受けて、2012年6月、裁判所はナタリアの生年月日を1989年9月4日に修正し、法的にも23歳の成人女性であるとされました。

 

こうなれば、もうバーネット夫婦に扶養義務はありません。子どもたちの安全や精神の安定も考え、バーネット夫婦は子どもたちと共にカナダに引っ越します。ナタリアはというと、バーネット夫婦が出ていった家に一人で暮らすことになり、映画を彷彿とさせる事件は終わりを迎えたかに思われました。しかしここから、映画とは違う悲劇が、夫婦に降りかかります。

 

⑤終わらない悲劇

カナダに移ってからも、バーネット夫婦はナタリアと連絡を取り続けていました。夫婦を騙し、殺そうとまでした相手に対しても、境遇を思うと完全に切り捨てることができなかったのかもしれません。

 

しかし2013年になって、突然ナタリアとの連絡が途絶えます。

そして2019年、状況は急展開を迎えます。

 

なぜか、バーネット夫婦は逮捕され、その理由は育児放棄というものでした。訳が分からない話ですが、ナタリアとの連絡が途絶えてから、バーネット夫婦の知らないところで、二つのことが進行していました。

 

一つは、2016年にマンズという夫婦が起こした裁判であり、もう一つは、2014年にナタリアが警察に「里親が自分を置いてカナダへ行ってしまった」と、育児放棄を訴えたことです。

 

マンズ夫婦は、ナタリアを養子にしたいと考えましたが、彼女は法的にも成人女性として認定されています。普通に考えるなら、そこで引き下がりますが、マンズ夫婦は養子にしたいという自分たちの思いを叶えるために、事実を曲げさせる行動に出ます。それが、ナタリアは未成年であるという訴えです。

 

この考え方と行動もホラーですが、訴えを受けた裁判所は、再びナタリアの検査を実施します。しかしやはり、ナタリアは成人女性という事実が覆ることはなく、マンズ夫婦の目論見は失敗に終わります。

 

しかし、ナタリアから育児放棄の訴えを受けた警察は、ナタリアは成人女性という判決が出ているにも関わらず、どういうわけかバーネット夫婦を逮捕し、捜査官はナタリアを放置したバーネット夫婦を非難したとされます。

 

さらには、証言の切り取りというメディアの常套手段によって、マイケルが「ナタリアが子供だと思っていた」という部分だけが報道されたことで、事態は大きくなりましたが、マイケルは弁護士を通じ、報道されていることは証言の切り取りであると発表し、保釈金を払って釈放されました。クリスティーンについては、2023年3月の時点では、まだ釈放されていなかったようです。

 

⑥エスターに負けない強キャラ、ナタリア

映画のキャラクターであるエスターは、紛うことなきサイコパスでした。

自分の目的を達成するためなら、騙し、脅し、殺しまでやり、失敗したら事故に見せかけて家族全員を殺害するという、ゾッとする行動を見せます。

 

外見が子供だから疑われないという前提があるのかもしれませんが、その異常性に恐怖は感じるものの、あっさり殺人までやってしまうあたりは、サイコパスらしからぬ計画性のなさが見えます。

 

サイコパスは、大きく分けると二種類いて、共感力がないのはどちらも同じですが、計画的で冷静に物事を達成していくタイプと、計画性がなく、行き当たりばったりなタイプがいます。

 

エスターは、一見すると前者のタイプに見えますが、殺人という、犯罪の証拠を消すことが難しい行為に躊躇いがないあたり、自信過剰で計画性がないと見ることもできます。

 

ナタリアも、エスターに負けない強かさと行動を見せていますが、家族の中に溶け込んで安定した生活を送りたかったのであれば、14歳以上と発覚したときに、本性を現すのではなく、「嘘ついててごめんなさい、怖かったの」というような演技を見せて、その後おとなしく過ごしていれば、家族として受けいれられたかもしれません。

 

しかし、おそらくは本当のことが発覚してすべてが終わる不安と恐怖から、脅して言うことを聞かせるという方向に走ってしまい、その結果、一番逃れたかった破滅への引き金を自分で引いてしまったと言うことができます。

 

エスターもナタリアも、他人には分かりづらい病気を患っており、誰にも理解されない苦しみをもっていたと思われ、その点は気の毒ではありますが、だからといって彼女たちの行為が許させるわけではありませんし、その行為が人を戦慄させるものであったことは事実です。

 

以上が、エスターが実話と噂されるキッカケとなった、リアル・エスター事件こと、ナタリア事件の真相です。

 

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エスターはどんな映画?

実話とされる事件と比較するために、まずは2009年公開のエスターのあらすじについてお話します。

 

主人公のケイト・コールマンは、夫のジョン、息子のダニエル、難聴をわずらっているものの、明るく素直な少女、マックスと四人で幸せな生活を送っています。しかし彼女は、三人目の子供を流産したという傷を負っていました。

 

ジョンはケイトを支えますが、彼女の傷は中々癒えず、状況を改善するために孤児院を訪ねて、9歳の少女を引き取ります。少女の名前はエスターといい、すぐに手話を覚えてマックスと仲良くなり、家族に馴染んでいきますが、ダニエルだけは、何か引っかかるものがあったのか、歓迎していませんでした。

 

そして、徐々にエスターの違和感が染み出してきます。

その違和感は、首と手首に常にリボンを巻き、入浴のときは必ず施錠するといった日常的なことに留まりません。

 

鳩を傷つけてしまい、苦しんでいるダニエルを前に、鳩に石を叩きつけて殺害する、ケイトのジョンの夜の営みを見て、あれがどういう行為かと子供向けの説明するケイトに「知ってる、ファックでしょ」と口にする、弾けないと口にしていたピアノが弾けるなど、「この娘、どこか変だ」と感じさせる行動が増えていきます。

 

ケイトは不信感を抱きますが、ジョンはケイトの心の傷が関係していると考え、エスターを信じない君の問題と反論し、家族が増えて深まるはずの絆に綻びを生じさせます。

 

そんなある日、ケイトとジョンのもとに、エスターがいた孤児院のシスター、アビゲイルが訪ねてきます。アビゲイルは、過去に起こった騒ぎや事故の現場には必ずエスターがいて、かつて彼女が住んでいた家と人も、放火によって消失したと言います。

 

衝撃を覚えるケイトとジョンでしたが、三人の会話を、エスターも聞いていました。

自分に不利な状況になりつつあると察したエスターは、信頼を得ていたマックスを利用してアビゲイルを殺害します。

 

ケイトとジョンは、エスターを精神分析医のもとへ連れていきますが、無能な精神分析医はあっさりエスターに騙され、ケイトにこそ問題があるという、エスターの筋書き通りの診断を下します。

 

ジョンも自分の話に取り合ってくれない以上、自分で調べるしかないと、ケイトはエスターの過去を調べ始め、徐々に真相に迫っていきます。

 

その状況に危機感を覚えたエスターは、自分を信頼しているジョンの懐に入り、自分で自分の腕の骨を折ってケイトがやったことにするという工作も使い、ケイトを孤立させていきます。しかしケイトは諦めずに調べ続け、ついにエスターが、エストニアの精神病院にいたことを突き止めます。

 

その頃、マックスの様子がおかしいことに気づき、家の近くにあるツリーハウス(秘密基地のようなもの)に、アビゲイル死亡の真相を示す証拠があることを知ったダニエルは、証拠を集めようとしますが、エスターに邪魔されて失敗、ツリーハウスは焼け落ちてしまいます。さらには、落下して動けないダニエルの頭を、エスターは一切の躊躇いなく石で潰そうとしますが、マックスがエスターに体当たりして助かり、直後にケイトが家事に気づいたため、病院に搬送されて一命を取り留めます。

 

しかし、ダニエルの意識が戻れば自分のやったことがバレてしまうと考えたエスターは、病院でダニエルを窒息死させようとするも失敗、エスターの仕業と確信しているケイトは激高し、エスターを手のひらで殴りつけ騒ぎ立てますが、看護師たちに取り押さえられ、鎮静剤を打たれて病院で一夜を過ごすことになります。

 

一方、この期に及んでも状況に混乱するだけのジョンは、エスターをマックスに近づけないでというケイトの願いすらも守らず、一人でワインを飲み始めますが、そこに、ドレスを着て化粧をしたエスターが現れ、異性として迫られたことでようやくリスクに気づき、もう君を家には置いておけないと拒絶します。

 

同じ頃、病院で寝ていたケイトの携帯が鳴ります。電話の主は、エストニアの精神病院の医師で、エスターの本当の名はリーナ・クラマーといい、下垂体機能低下症(かすいたいきのうていかしょう)による珍しいホルモン異常で、発育不全で子供に見えるが、実際は33歳の女性だと言います。

 

生涯のほとんどを"子供"として過ごし、最初に養子なったエストニアの家では、父親を誘惑するも失敗し、家族を皆殺しにして家を焼き払い、医師が知るだけでも七人を殺害している連続殺人鬼であることが判明します。

 

非常に凶暴な性格で、病院の職員も手に負えず、拘束具をつけていたため、首と手首に消えない跡が残っており、一年前に脱走して行方不明と聞かされ、ケイトはエスターとリーナが同一人物だと確信、警察に通報しつつ家に急ぎます。

 

ジョンに電話するも出ず、家に着いたときには、拒絶されたことで激高したエスターによって殺害されており、ケイトも殺されそうになりますが逃げ切り、殺されそうになったマックスをなんとか救い出し、パトカーが見えたことで安堵するケイトでしたが、エスターが追ってきたことでマックスを逃すも、自身は凍った湖の上でエスターと格闘になります。

 

母親を助けようと、エスター落とした銃を拾ったマックスの銃弾によって湖は割れ、エスターと共に落ちて這い上がろうとするところで足を掴まれますが、ケイトは最後の力を振り絞ってエスターに蹴り、エスターは湖の底に沈んでいき、ケイトとマックスは警察に保護されて、物語は幕を降ろします。

関連記事:エスターに気まずいシーンはある?子供には見せられない?

 

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事実は小説より奇なり?

サイコホラーの傑作エスターが、実話を基に作られたという噂は、映画公開後に起こった映画さながらの事件が基になったものでした。本当にこんな事件があったのかと思うとゾッとしますが、ナタリア事件を知った後に観るエスターは、また違った趣きがあります。前日談である「エスター ファースト・キル」と合わせて、ぜひもう一度、エスターの恐怖にゾクゾクしてみてください。

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