「世界一キライなあなたに」はエミリア・クラーク/サム・クラフリン主演のラブロマンス映画です。この映画は実話という噂がありますが本当でしょうか？劇中に「安楽死」という命を考えさせられるテーマが織り込まれている本作品。
「世界一キライなあなたに」が実話であるという噂を、作品のあらすじや魅力をおさらいしながら検証していきましょう。
「世界一キライなあなたに」をおさらい
「世界一キライなあなたに」はアメリカとイギリスの合作で2016年に公開された、エミリア・クラーク/サム・クラフリン主演のラブロマンス映画です。どんな物語なのか・・・あらすじでストーリーを思い出していただくと同時に、その魅力を少しだけご紹介します。
あらすじ
個性的なファッションが大好きな女の子ルイーザ(エミリア・クラーク)が、新しい職として見つけたのが半年間の介護職。お世話することになったのは、元実業家のお金持ちでハンサムなウィル（サム・クラフリン）でした。彼は事故で全身麻痺を負い、車いす生活を余儀なくされた男だったのです。
生きる意味を失いかけ、不愛想で卑屈になっていたウィルと、そんなウィルを嫌うルイーザ。しかしルイーザの持前の明るさは、ウィルに徐々に笑顔を取り戻すようになります。一方ルイーザも、ウィルに後押しされ、さまざまなことに挑戦ができるように。2人はいつの間にか自然に笑い合う仲になります。
やがて2人は、雇い主と雇われの関係を越えて恋に落ちます。しかしルイーザは、ウィルが安楽死を希望していること、そのタイムリミッドが刻々と近づいていることを知ってしまうのです。
この映画の魅力
この映画の最大の魅力は、相容れなかったルイーザとウィルが段々と惹かれあっていくロマンチックストーリーでしょう。特に2人がパーティーへ行くシーン。パーティー会場で、エド・シーランの「Thinking Out Loud」をBGMに見つめあう2人のシーンは、観ている私たちをドキドキさせてくれます。タキシードに身を包んだウィルのハンサムさ、今までの個性的なファッションから一変して、華麗なドレスに身を包むルイーザの美しさは目を見張るものがあります。
この映画には、そんな甘いラブロマンスの一方で、命を考えさせられるストーリーが織り込まれています。ウィルは全身麻痺の身体で生涯を全うする気はなく、安楽死を望んでいることをルイーザは知ってしまうのです。ルイーザと出会い、楽しい日々を過ごしているはずのウィルでしたが、その楽しさでも満足できないほど、事故で自由が利かなくなった身体を重荷に感じていました。そしてウィルの安楽死を望む思いは、ルイーザの必死の説得でも揺らがないほど強固なものだったのです。
2人のぎこちない出会いから悲しいカタチの別れまで、様々な感情が混ざり合うヒューマンドラマがこの1本につまっています。
「世界一キライなあなたに」は実話？
「世界一キライなあなたに」のウィルとルイーザの恋物語はすべて実話という噂があります。そう信じてしまうほどのインパクトがある展開の真相に迫ります。
ある出来事がモチーフになった原作
結論から言うと、「世界一キライなあなたに」は実話ではありません。ウィルとルイーザの恋物語は完全なるフィクションですが、ウィルが劇中でみずからの死をのぞむ姿勢は、ある実話とスイスの国の制度が背景にありました。
この映画はジョジョ・モイーズ著「Me Before You」という大ヒット恋愛小説が原作となっています。実際に映画も、本国ではこのタイトルです。日本では「あなたを知る前の私」という意訳で解釈されています。この原作者によると、ある英国のラグビー選手が事故でほぼ全身麻痺になったことで安楽死を望み、最終的には両親の同意のもとで、安楽死したという実話がモチーフになっているとのことです。
これが「世界一キライなあなたに」が実話であるという噂の真相です。
安楽死が認められる国スイス
スイスでは人間の選択肢の一つとして安楽死、またの名を尊厳死が認められています。映画の原作のモチーフになったラグビー選手も、映画のウィルも、スイスでその生涯にピリオドを打ちました。
スイスでは医師の厳格な判断のもと、「安楽死」の希望が認められると、「自殺ほう助」という形で医師の力を借りて、苦痛なく自らの命を経つことができるのです。日本では身体的、精神的にどんなに苦しくても、「安楽死」を選ぶことは認められていません。もし医師が患者の意思をくみ取り「自殺ほう助」をすると重い犯罪になります。
スイスには自殺ほう助のNPO団体が存在し、世界各国から「安楽死」を望む人々を受け入れているところもあります。「安楽死」を望み、スイスで自殺ほう助を受けた日本人も実際にいます。自殺ほう助を受けるのは簡単ではなく、医師による複数回の面談により,
厳格な判断のもと、自殺ほう助を受けるに値するかが審査されます。「なんとなく死にたい」「目の前の辛いことから逃れたい」という思いつきや明確な意思がない、自殺願望的な安楽死は認められていません。
・治る見込みのない病気や身体的不自由を一生背負うことになった
・耐え難い苦痛や障害
などが認められ、かつ本人に正常な判断能力があるかどうか？などが認定基準となります。あくまで「人間の選択肢の一つ」で、かつ最終手段であるという前提があります。
ウィルが自らの命を絶つ選択の背景には、「死ぬ権利」というあまり日本には馴染みのない概念が描かれていたのです。スイスの「安楽死」に関する考え方を学ぶと、「世界一キライなあなたに」が違う視点で見えてくると同時に、「人間の死」という重たくも、誰もが経験する現実について、あなたなりの答えを持つことができるようになるでしょう。
まとめ
今回は「世界一キライなあなたに」が実話であるという噂の真相を探ってみました。物語の背景を深堀していくと、「人間の死」に関する一つの選択肢を知ることができる作品ということがわかりました。もしあなたがウィルと同じ立場になったとき、あなたならどのような選択をするでしょう？そんなことを考えながら、自分の命に向き合って、この映画を鑑賞してみてください。