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『ゴーン・ガール』は実話!?元となった事件を詳しく紹介

結婚の実像に焦点を当てて大ヒットしたミステリー映画、ゴーン・ガール。

ミステリーという要素以上に、理想の結婚生活を演じきることを至高とするエイミーの狂気にゾクゾクする映画ですが、実は元となった事件があります。

ゴーン・ガールは実話なのか? 本記事では、映画と事件を比較、実話なのかについて、解説します。

 

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実話?ゴーン・ガールのネタ元と言われる事件

ゴーン・ガールは、結婚とは? という問いとミステリー要素を結びつけたストーリーでしたが、映画のネタ元と言われるスコット・ピーターソン事件(レイシー・ピーターソン事件とも呼ばれる)はどんな事件だったのか、見ていきます。

 

①失踪した妻

スコット・ピーターソンはとレイシー・ピーターソンは、周囲が羨むような夫婦でした。

スコットは、父親が実業家で、一時はプロゴルファーを目指していたというゴルフの腕前も一流のイケメン、レイシーが失踪した当時は肥料メーカーの営業をしていて、月に5000ドル(税引前)は稼いでいました。

 

妻のレイシーは、高校時代にチアリーダーをしており、明るい性格で料理好き、休日には家族や友人に料理を作ってもてなす、妻としての理想を体現したような女性で、妊娠前は代理教員としても働いていました。

 

そんな幸せな夫婦に、ある日事件が起こります。

2002年12月24日の早朝から釣りに出ていたスコットが家に帰ってくると、妊娠八ヶ月で身重なはずのレイシーがいなくなっていました。どこかに出かけるなどの書き置きもなく、自宅の周囲を探しても見つからなかったため、スコットは警察に通報します。

 

通報を受けた警察は付近を捜索、ボランティアも協力して、報奨金を出すという話にまでなり、事件は全国ニュースになるまで広がったことで、仲睦まじい理想の夫婦を襲った突然の悲劇に、スコットに同情する声が集まります。

 

②変わる風向き

警察は、自宅を調べる中で、クローゼットの中にあったレイシーの財布と鍵を発見しました。テーブルには、翌日のクリスマスディナーに備えたセッティングがされており、レイシーが自分からどこかに行ったとは考えられない状況で、警察は事件性を確信します。同時に、事件を担当した刑事は、このときのスコットについても、違和感を覚えていました。

 

妊娠八ヶ月の妻が失踪し、何かしらの事件に巻き込まれた可能性が高いという状況の中でも落ち着いていて、取り乱す様子がなかったのです。パニックになりそうなときこそ冷静でいることは重要ではあるものの、そういった冷静さとは違う、どこか他人事のような印象を覚えたようです。

 

そのため、警察は当初からスコットに疑いの目を向けていましたが、レイシーの家族が彼は無実だと信じていたため、失踪から一ヶ月ほどは公表を控えていました。しかし、捜査を続けるほど、スコットへの疑惑は大きくなっていきます。

 

失踪当時、最初はゴルフに行っていたと証言していたのに、後に釣りに行っていたと撤回したり、不可解なことがあったことに加えて、アンバー・フライという女性と不倫していたことが発覚、それ以前にも不倫関係にあった女性がいたことも判明し、スコットの無実を信じていたレイシーの家族も、その事実を知った後は支持を撤回します。

 

さらには、レイシー失踪の14日前、スコットはフライに、初めてクリスマスを妻と離れて過ごすことになる、という話をしており、殺害という明確な言葉はないものの、暗にレイシー殺害計画を示唆しており、状況証拠はスコットが犯人であることを物語っていました。

 

③遺体発見

レイシーの行方が分からないまま四ヶ月が過ぎ、生存は絶望的と思われながらも捜索が続いていた2003年4月13日、サンフランシスコ湾の東岸で、女性と胎児の遺体が発見されます。身元を確認した結果、レイシーとお腹にいた子供であることが判明、警察は状況証拠から、スコットを逮捕します。

 

逮捕されたとき、スコットはゴルフに行くつもりだったと証言しましたが、車には現金15000ドル、サバイバルキッドやキャンプ用品に加えて、数日分の着替えなど、ゴルフに行くという言葉とは一致しない荷物が積まれていました。

 

遺体のほうは損傷が激しく、死因の特定には至りませんでしたが、亡くなる前に肋骨を何本か折っていたことから、警察は、レイシーは自宅で絞殺され、捨てられたという結論を出しました。

遺体は、手足と頭、胴体が切り離されており、いわゆるバラバラ死体になっていたことも考えると、自宅で殺害し、遺体を運びやすくするためにバラバラにしたと考えることができます。

 

失踪届が出された日の午後2時過ぎに、レイシーに対して「これから帰るよ」とメールを送っているのも、自分は事件に関与していないという状況を作り上げるための演出の一つだったと考えられます。

 

④物的証拠は髪の毛一本

逮捕後、裁判が行われましたが、それまでに警察が集めた証拠の中で、スコットがレイシーを殺害したことを証明できそうな物的証拠は、スコットの船にあったプライヤーに付着していたレイシーの髪の毛だけした。

 

また、胎児の遺体は出産後に殺害されたものである可能性を否定できないとして、スコットの弁護士は、レイシーは何者かに誘拐されて、出産するまで生かされた後に殺害されたという説を主張したり、スコットの代理人は、悪魔崇拝者の仕業だと主張したりしましたが、それを裏付ける証拠は何もなく、状況証拠から考えれば、スコットが犯人であることは疑いようのないことでした。

 

検察は、殺人の動機を金銭問題とフライとの不倫関係と推察し、陪審員は、妻の殺害を一級殺人(計画的な殺人)、胎児の殺害を二級殺人(計画的ではない殺人)として、死刑判決を下します。裁判官も判決を支持し、スコットの死刑が確定します。

その後控訴するも、再審には至っていません。

 

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スコットはなぜ妻を殺害したのか?

映画では、理想の結婚生活を夫にも強いて、舞台から降りようとする夫を罠に嵌めて死刑にしようとした妻の狂気が描かれていましたが、元になった事件では、周囲から見れば誰もが羨むような夫婦だったという点や、妻が失踪して夫に疑いがかかるというポイントは同じものの、真相は大きく異なります。

 

現実の事件のほうは妻の捏造ではなく、物的証拠がないものの、事件前後のスコットの言動、逮捕されたときの状況を見る限り、スコットが犯人と考えて間違いないと思います。

 

スコットにとっては、子供ができたことも望ましいことではなく、しかしどうすることもできないまま、すべてをゼロに戻して自由になるために妻を殺害、結果的にお腹の子供も亡くなることも分かった上でのことで、事件発覚当時、警察にゴルフに行っていたと嘘をついたのも、遺体が発見されることを恐れた咄嗟の言い逃れだった可能性が高いと考えられます。

 

ゴーン・ガールはどんなストーリー?

まずは、ゴーン・ガールがどんなストーリーなのか見ていきます。

 

①妻の失踪

主人公のニックは、妻エイミーとの5回目の結婚記念日を迎えます。結婚記念日には、エイミーの宝探しクイズが恒例となっていたが、ニックはクイズが解けないまま、妹が経営するバー(ニックも共同経営者でスが、彼は短大の講師もしています)に立ち寄ってから自宅に戻りますが、妻がいなくなっていることに気づきます。さらには、家の中は誰かと争ったように荒れており、ニックは動揺しながら警察に連絡します。

 

父親が書いた児童文学シリーズのモデルとして、幼い頃から「完璧なエイミー」として知られる女性の失踪に、警察も即座に捜査を開始します。ニックはエイミーの両親とともに、メディアを通じて捜索の協力を呼びかけますが、メディアはニックに疑いの目を向けます。

 

なぜ自分が……戸惑うニックでしたが、捜査を進めていくうちに、ニックはエイミーが普段何をしているのか知らないこと、エイミーには友達もいないと思っていたら親友を名乗る女性が出てきたこと、金銭的問題や家庭内暴力があったこと、身の危険からか、エイミーが銃を購入しようとしていたことなど、ニックに不利な証拠が次々と出てきます。

 

そしてトドメとばかりに、エイミーは妊娠していたことを示す検査結果、キッチンの床から大量の血を拭き取った痕跡が出てきてしまい、警察はニックへの疑いを強くします。そんな中でエイミーの日記を発見、そこにはニックにとって覚えのないことも多数書かれていました。

 

②エイミーの過去

しかし、殺されたと思われたエイミーは生きていました。

警察が発見した証拠はすべて彼女が用意したものであり、日記の内容も創作がほとんどでしたが、夫のことで悩む善良な妻という印象を与えるストーリーとなっていました。その目的は、妻殺しとして夫を死刑にすることです。献身的な妊婦を殺害した夫という、最悪の印象操作によって世論を動かすために、妊娠の事実さえも捏造したのです。

 

彼女をそこまでの行動に駆り立てたのは、エイミー自身の性格、価値観によるものもありますが、トリガーとなったのは、ニックの不倫でした。

 

理想の結婚生活を演じることを至高とするエイミーにとって、ニックが勝手に舞台から降りてしまったことも許せないのに、不倫というトドメを刺されたことで、沸点を越え、夫を亡き者にする完全犯罪を目論んだのです。

 

一方、エイミーのクイズを解いたニックは、妻が自分を死刑にしようとしていることに気づき、無実を証明するために、弁護士のタナー・ボルトに相談します。ボルトは、夫が妻を殺害するという特殊なケースを専門とする敏腕弁護士で、ニックに協力して事件を調べていきます。

 

すると、エイミーは過去にも、思い通りにならなかった男を、証拠を捏造して犯罪者に仕立て上げた事実が判明、強力な反撃材料になると思われましたが、メディアの風向きを変えるには至らず、ボルトはニックに、メディアに出て、不倫を告白して反省を示すしかないと提案し、ニックは覚悟を決めます。

 

エイミーはニックの死刑を待っていましたが、泊まっていたモーテルで知り合ったチンピラもどきのような隣人に、持っていた現金をすべて奪われ、のんびりしていられなくなり、元彼であるデジーのもとへ車を走らせます。デジーは高校時代の彼氏で、別れた後もストーカーのようにつきまとい、現在も彼女宛に手紙を送ってくる執拗さでしたが、他に選択肢はありません。

 

デジーと再会したエイミーは、ニックに殺されないように逃げてきたと迫真で語り、自分のもとへ戻ってきてくれたチャンスをものにしたいデジーはそれを信じ、別荘に匿うことを決めます。

 

直後、ニックの不倫相手のアンディが、エイミーの両親とともに記者会見を開いて不倫を告白、涙を流しながら反省を示し、エイミーの両親はニックへの支持を取り下げます。

 

こうなってしまっては告白しても……と、ボルトも妹は頭を抱えますが、ニックはエイミーがプレゼントしたネクタイを締めてインタビューを受け、不倫をしていたこと、夫として自分が完璧でなかったことが悪いと謝罪、エイミーに、家に帰ってきてほしいと切に訴えると、攻撃的だった世論が変わり、それを見ていたエイミーもまた、ニックへの想いを再燃させます。インタビューで見せたニックこそ、エイミーが求める理想の夫の姿でした。

 

密かにニックのところに戻ることを決めたエイミーでしたが、そうなるとデジーの存在が邪魔になります。

 

親切でありながら支配的な性格をもつデジーに嫌気も差しており、デジーが出かけたのを確認してから、怪我をしているように偽装し、防犯カメラに映る位置まで来ると、あたかも拉致監禁されていた女が助けを求めるように"完璧に"演じた上で、レイプの証拠を捏造してからデジーを誘い、行為の最中に隠し持っていたカッターでデジーの首を切って殺害します。そして失踪から30日が経った日、エイミーはスタッフが張り込む自宅に戻ってきます。

 

戻ってきたエイミーは入院、警察は彼女に状況を聞き、これまでの状況や証拠との矛盾を指摘しますが、エイミーは、自分は拉致監禁から命からがら愛する夫のもとに戻ってきた被害者という立ち位置からそれらを躱し、退院するとニックとともに自宅に戻ります。

 

③勝利したはずのニック、しかし……

妻殺しの容疑から逃れたニックでしたが、エイミーを信じたわけではありませんでした。

デジー殺害は正当防衛ではないと気づいていたニックが詰め寄ると、エイミーは罪悪感など生まれたときからもっていないかのように自分の行動を正当化、世論を変えたニックの姿こそ、理想の夫の姿であり、これからもそうあってほしい、そうあるべきと要求、ニックは耐えきれなくなり、家を出ると言い放ちます。

 

メディアの加熱が収まらない中、エイミーが行方不明のときに散々ニックを貶めた番組にインタビューを受けることになり、ニックはそこで、エイミーの殺人を暴露することを決めます。しかし、自宅に番組のスタッフが来て準備が進む中、エイミーに妊娠していると聞かされます。

 

ありえないと言うニックでしたが、精子バンクにあった、破棄されたと思っていたニックの精子は破棄されておらず、エイミーはそれを使って本当に妊娠していました。

 

怒りを抑えきれずにエイミーの頭を壁に叩きつけるニック。

しかし、狂気的に”完璧”を追求するエイミーと、子供ができたという事実に折れて、子供が成人するまでエイミーと暮らすことを妹に伝えます。妹は反対しますが、ニックは覚悟を決めており、二人のインタビューを報道するテレビの画面では、様々な困難を乗り越えて強い絆で結ばれ、子供を授かった幸せな夫婦の姿が映し出される……というところで、物語は幕を下ろします。

 

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映画より恐ろしい実話

ゴーン・ガールは実話かと言われれば、実話ではなく、実際の事件をモデルにして作られたフィクションということになります。前述したように、ポイントは同じでしたが、本質は異なります。

 

結婚とは、というテーマが存在した映画に対して、実際の事件は、身勝手な男が短絡的発想から起こした残虐な殺人であり、テーマ性は皆無です。どんな恐ろしい映画も、事実には及ばないのかもしれません。

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