映画「ドライブ・マイ・カー」は、村上春樹氏の小説を原作に、濱口竜介監督が長編映画化。2021年に公開されました。この映画のラストシーンは、本作のヒロイン“みさき”が韓国で車を運転しているシーンで終わります。しかも運転している車は、主人公の家福悠介が大事に日本で乗っていた愛車。どうやらみさきは韓国で生活をしているようです。このラストシーン、劇中では一切の説明がありません。映画を観た人たちからは、「なぜみさきは韓国にいるの?」「なぜ韓国で家福悠介の愛車に乗っているのか?」と疑問の声が上がっています。さまざまな憶測を呼ぶ映画「ドライブ・マイ・カー」のラストシーンについて、その真相を調べてみました。
「ドライブ・マイ・カー」概要
映画「ドライブ・マイ・カー」のラストシーンの真相に迫る前に、本作がどのような作品なのか?ストーリーのあらすじや、キーとなる設定をおさらいしていきましょう!
あらすじ
監督:濱口竜介
キャスト:西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、岡田将生ほか
舞台俳優兼演出家の家福悠介(西島秀俊)は、妻の音(霧島れいか)と幸せな日々を送っていました。ある日、音は悠介に秘密を残したまま、くも膜下出血で帰らぬ人となります。
それから2年後。真っ赤な愛車で、広島国際演劇祭へ向かった悠介。そこには悠介の専属ドライバーとして雇われた女性みさき(三浦透子)が待っていました。演出家が演劇祭の企画最中に、自らの運転で事故を起こす心配を考慮してのことです。みさきはある秘密の過去を持っている女性。妻を失った喪失感でいっぱいの悠介は、みさきと時を過ごし、お互いの過去を明かしていくなかで、今まで目を背けていたことに気づき始めます・・・。
映画のキーになる主人公の真っ赤な愛車
車の中でドラマが展開する
映画「ドライブ・マイ・カー」はタイトル通り、主人公悠介の愛車を中心に物語が展開していくのが特徴です。映画中盤では車の中で交わされる会話が、劇中で重要な意味をなしてきます。映画終盤、悠介とみさきは北海道まで旅をし、お互いが抱えていた、家族への複雑な思いや後悔を晴らすのですが、その旅も悠介の愛車での移動でした。
そしてラストシーン。韓国のスーパーマーケットで買い物を終え、駐車場が映し出されます。そこに停まっていたのは、悠介の真っ赤な愛車でした。映画序盤から終盤まで、主人公と同じくらいの頻度で登場した真っ赤なこの車。映画を観ている人の頭の中には、そのシルエットが焼き付いています。この車をみさきが韓国で乗り回しているシーンは、みさきが韓国で生活していることを悟らせます。そして同時に驚きと疑問を湧いてきます。「なぜ、みさきは韓国にいるの?」。「なぜ悠介の愛車を乗っているの?」。
映画で重要な役割を果たした悠介の真っ赤な愛車。そもそもラストシーンの疑問の前に、この車が気になります。日本ではあまり・・・というか見かけたことがない変わった形をした車です。左ハンドルなので、国産車でないことはわかりますが、映画のなかで悠介は、この車の車種名を口にしません。一体この車、どこの国のなんという車なのでしょう?
悠介の真っ赤な愛車の正体は?
「ドライブ・マイ・カー」のなかで頻繁に登場する悠介の愛車は、スウェーデンの「サーブ900ターボ」という車です。今では日本で見かける機会はなくなってしまいましたが、1980年代後半から1990年代にかけては、独特な唯一無二のデザインが注目を集めました。変わった形と真っ赤なボディが、頭に焼き付けられ、ラストシーンでは、韓国でサーブが登場することで、驚きと混乱を招きます。まさに悠介の愛車「サーブ900ターボ」は、もうひとり?の主人公です。
映画「ドライブ・マイ・カー」のラストはなぜ韓国?
「ドライブ・マイ・カー」のラストシーン、みさきはなぜ、悠介の真っ赤のサーブとともに韓国にいたのでしょう?その光景を見る限り、旅行ではなさそうです。映画好きの中では、つぎのような考察がなされています。
1. みさきは在日韓国人だった?
母親への想いが晴れたみさき
みさきを暴力で苦しめていた母親。その後、実家が土砂崩れで呑みこまれ、母親は帰らぬ人となりました。その時、母親とともに飲み込まれた家を、ただ茫然と見つめるしかなかったみさき。みさきの心の中には、母親を見殺しにしたという罪悪感に似た感情がありました。
映画終盤では悠介とともに、北海道の土砂崩れのあった実家を訪れ、母親を弔いました。このとき、みさきの心にあった、母親への罪悪感や苦い過去の呪縛が解けたのでしょう。
みさきの母親が在日韓国人だったとしたら、母親への様々な想いが晴れたみさきが、自分のルーツがある韓国で暮らしてみる気になったとしても不思議ではありません。
悠介に愛車を譲ってもらった
みさきが自分の母親の故郷である韓国で暮らし始めたとして、なぜ悠介の愛車サーブに乗っているのでしょう?
みさきは、悠介の愛車の運転手を務めていくうちに、サーブを好きになっていきます。悠介にも「私、あの車すごく好きです」と正直に伝えるシーンがありました。
はじめはみさきにそっけない態度をとっていた悠介でしたが、自分と同じく、家族に対して心残りがあるみさきにシンパシーを感じはじめます。北海道では、亡くなった妻に対する正直な想いを打ち明ける悠介の姿がありました。お互いに心が通じ合ったみさきになら、大事な愛車を託せると思った悠介は、みさきに愛車を譲ったのではと考えられます。
2. 悠介とみさきが結婚して韓国へ移り住んだ
前述した北海道で、亡くなった家族への心残りが解消したように見えた悠介とみさき。最後は2人で心通じ合い、抱き合います。一見、恋愛感情がない喜びのハグにみえましたが、じつはあの時点から2人の間に“男女”の感情が芽生えたのでは?とも考えられます。
2人は何年かたったのち、愛車と共に韓国へ移り住み、結婚して幸せに暮らしているのではないでしょうか。
「広島国際演劇祭」の演出を務めていく過程で、韓国人と交流が深まった悠介とみさき。2人のなかで、韓国の文化や人間性に惹かれるものができ、韓国への移住を決意したのかもしれません。
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まとめ
今回は映画「ドライブ・マイ・カー」のラストシーンについて、「なぜみさきが韓国にいるのか?」について調査してみました。劇中で一切語られることのない韓国でのラストシーンは、観たもののあいだで様々な憶測を呼んでいます。あなたも自分なりのラストシーンの意味を考えてみると、この作品がもっと面白くなるのではないでしょうか。